個人塾経営の日々ーコツコツとのんびりとー

小さな個人塾を経営しています。ゆっくりのんびりと生徒とむきあいたいです。

無職で学習塾を設立した話。ーその3ー どうする机編

なけなしの50万円を握りしめ、テナントを借りることになった、わたし33歳無職は、テナントの賃料・礼金・敷金etc,を支払うと、すでに残金が20万円ほどになっていることに絶望していた。

なんといっても、机とイスの値段が高いのだ!いろいろ中古オフィス家具を扱っているお店に伺い、見積もりをしてもらったりしたのだが、もう絶望的に予算が足りない。普通の学校にある机とイスって、セットで2万円超えるんですねぇ、とため息をついていた。

某有名個別塾などの、机やイスのセットは大まかに80万円以上はかかる。ほんとうにフランチャイズで学習塾開く人って、本当に経済力あるなぁ、と考えながら、自分の無謀な挑戦を恨んだりした。

いやいや、安いオフィス家具でも勉強できますよ〜とお思いの方もいらっしゃるかもしれない。確かに、1600円ぐらいの折りたたみの机で、勉強させている学習塾もある。その机をわたしも一人暮らしの時に使っていたのでわかるのだけれども、かなり小さく、ガタガタだった。そんな環境で勉強させるのは、心苦しい。

会議テーブルでも勉強はできるかもしれない。しかし、安い会議テーブルでは、一緒に座っている生徒が鉛筆や消しゴムを使うたびに、ガタガタと揺れてしまい、書きにくい、勉強しにくい。できれば一人につき机を提供したい。

そもそも、学習塾を開く理由は、教育の経済的・地理的格差を埋めるため、という大義名分があるので、家で十分な学習環境がない生徒のことを想定したかった。理想は、広い机、一人で自由に使えること。

特に、英語専門の学習塾なので、授業、自習で辞書、ノート、教科書、問題集、文法書を広げることを考えてみれば、学校で使うような机よりも大きなものが欲しかった。

毎日、インターネットを調べ、ホームセンター、家具屋、中古オフィスショップに赴いた。なかなか、いいものがないなぁ、と思っていた時、車で数時間かけて、IKEAに行ってみた。

IKEAだ。なかなか、良いテーブルやイスがある。これで、自習スペースや応接スペースはまかなえる。でも、勉強机を探すとなると、安いIKEAの学習机は、スカスカで、軽く触れただけで動いてしまう。

失意に沈んだわたしは、IKEAのとなりにあるニトリに行き、机をみていた。その中に、見知らぬデスクがある。あれっ、こんなのありました、と思いながみてみると、パソコンデスクだった。

デスク(ザッキー95)。硬い、重い、動かない、かつ、幅95センチと広々サイズ。一人で、勉強するにはもってこいである。値段も、4600円とリーズナブル。素敵だ。

www.nitori-net.jp

これください!と店員さんに、話すと、これは在庫を置かないタイプの商品だそうで、インターネットで、注文することにした。

それから、三日連続で、70km先のIKEAに通い、イスやテーブルを購入、わたしの小さな軽自動車につめこみ、塾に運んだ。配送も考えたが、配送料が3000円と高いし、塾の地域は、配送対象外だったから、すべて自分でやることになった。ニトリももちろん、店舗引取りだった。

本当に、生まれつき、力持ちでよかった。小さい頃から大学までスポーツ漬けだったのは、このときのためだったのだと思えるほど、肉体的に疲労した。ただ、面白かった。

自分で作る学習塾は、大きな箱庭みたいなもので、ここに何を置こうかとか、妻と相談しながら決めた。楽しかった。

そんなわたしに、IKEA特有の組み立てにくいテーブル、苔の生えた外階段の掃除、電話線を引くか引かないか、新聞折込するしない問題が、降りかかるのだった。

 

つづく

無職で学習塾を設立した話。ーその2ー テナント選び、サイト開設

海外の研究所への採用を見事不合格となったわたし33歳無職は、いきおいで学習塾を設立というアイデアを、身重の妻に告げたところ、まさかのゴーサインが出た。

やる気はあるが、カネはない。でも、経済的にも、教育の質的にも、理想に近い学習塾をつくりたい。そして、これは、のちのち、書くことになると思うが、路頭に迷う博士や院生の居場所をつくりたい、そんな考えがあった。

2020年以降は、大学受験において英語が他の教科に対して圧倒的に重要となると考えられる。英検などの英語四技能試験の導入は、経済的にも地理的にも機会不均衡だ。地方、田舎の生徒が不利なのだ。

気づけば、わたしには英検1級がある。海外に留学経験もある。しかも、人件費は、タダ。

ここで、儲かるつもりのない質の高い英語専門の学習塾を開こうと、考えたのだ。実験用ラットは、自分である。どうなるか、わからない。

2018年5月、わたしは、テナントを探し始めた。現在、とある県のとある地方都市に住んでいるのだが、もうこの地域には、大手の英語塾が入っていた。競争して勝てる相手ではない。しかも、高収入、高学歴な家庭が多いので、わたしは自分の住む地域ではなく、少し離れたよりイナカの地域を探すことになった。なにより、テナント料金が安くすむ。そうすれば、授業料も極力下げることができるだろう。英検を専門的に教えてくれる塾がない地域である、ということも設立地の条件となった。

テナント選びは、難航をきわめた。なんせ、おカネがない。だから、月10万も出すことはできない。でも、生徒にはできるだけ良い環境で勉強してほしい。できれば自習スペースも、と考えたら、50㎡以上はほしい。

毎日、インターネットで、物件を検索、不動産屋さんに電話したり、物件を下見に行った。なかなか、見つからない。

自分の少ない貯蓄、妻や両親からのカンパで、50万円が起業費用として集まった。フランチャイズで学習塾の起業費用の、10分の1以下かもしれないが、これ以上は出せなかった。

2018年7月、2ヶ月以上前から目をつけていたあるテナントが1万円以上の値下がりをしたのだ。58㎡で42000円!!しかも、中学や小学校が近く、英検に対応できる塾もない(対応できるというのは、中学生で2級、高校二年生で準1級を取得することを想定するということ)。すぐに、不動産屋さんに電話して、妻と内見、妻の「キレイ」という言葉で、即決した。自分の家から、車で30分かかるが、もしこの地域の生徒が英検に対応しようとすれば、各生徒がそれぞれ時間をかけて、他の市の塾に通うことになる。そう考えれば、自分が通勤することで、多くの人の時間を節約することができる。

敷金、礼金、保証金、含め 23万円なり。といこうことで、7月末から借り、2018年9月のオープンに決めた。

これに先立ち、実は、2018年6月から、インターネットサイトを開設した。これは、9月あたりに学習塾を開くことを逆算し、検索順位をオープンした時には、できるだけ高くしたい、と考えたからだ。

現在、「地名 英検」、「地名 英語」とグーグルに打ち込むと、検索順位1位となっている。初期投資として、毎月2000円は、ちょっと痛かったけど、効果はあったので、学習塾を開こうとしている人は、少し前から、インターネットサイトをつくり、seo対策をすることをおすすめしたい。

2018年7月から、わたしは、たった一人で、学習塾の内装にとりかかった。暑さとの戦い、地獄の日々だった。

 

無職で学習塾を設立した話。ーその1ー

これから、学習塾を始めようとしようとしている人、そして、現在、路頭に迷っている仲間に一読いただきたい。

2018年9月、英語専門の学習塾を設立した。理由は、2020年の新大学受験制度に対しての反感からだった。

2020年度の新大学受験制度では、英語四技能試験が導入される。東大のように、必須としない、と決定した大学もあるが、多くの大学は英検やTOEICなどを活用する方向に進むに違いない。

 しかし、この制度は多くの欠陥がある。例えば、技能試験そのものの欠陥をみてみよう。英検(2級)やTOEICは、大学を目指す高校生にとっては、あまりにも簡単で、ただ読む、聞くだけの技能であり、大切な「教養」、英文への深い理解を問うものではない。また、制度的な欠陥もある。民間試験は、それぞれ目的が異なっている、TOEICならビジネス英語、TOEFLは北米の大学進学、IELTSはイギリス、ヨーロッパを中心とした大学進学、移住で用いられる。そして、文部省がこの試験の根幹としてるCFER(ヨーロッパ言語共通参照枠)も、変更されることが決まっており、正直、グラグラ、ガバガバ、この制度作った人、外国語勉強したことないんじゃないの、というヤバイ制度なのだ。

 しかも、英検はこの制度に合わせて値上がりすることが決まっている。高校三年生用の英検が創設され、2000円から3000円ほど値上がりする。IELTSなどの試験は、大都市圏しか受験できないだけでなく、受験料は25000円とかなり高額だ。

 経済的な問題だけでなく、地理的な問題もある。英検などの四技能試験に対応できる学習塾は、田舎にはない。資格試験である以上、コツがある。そのコツさえつかめれば、高校生で英検準1級は難しくない。しかし、それを伝える人が、田舎、地方にはいない。いたとしても高額な料金をとられることになる。

つまり、この新大学受験制度は、都会の私立に通う、おぼっちゃんに有利な試験制度だ。

このことに、わたしは、怒ったのだ。

 だが、ただ怒り、SNS上にコメントしてすっきりするような輩にはなりたくない。そこで、低料金で英検を効率的に取得できる学習塾を設立することに決めたのだった。そのとき、わたしは、無職だった。

 昨年度までは、研究者としてとある大学にいた。そして、契約が切れた。大学を離れ、妻の住む地方都市に移住し、非常勤・常勤講師のくちを探していた。そんなある日、妻に妊娠を告げられた。うむ、ここで就職しようと思った。カタギに戻ろうと。しかし、妻に学習塾設立の構想を伝えると、「やってみていい。」という、お許しが出た。新しい物好きのわたしにとって、このチャレンジは、胸が踊るものだった。

ここで、わたしのスペックについて書きたい。男、33歳、学歴旧帝大博士課程(人文学系)、英検1級、元公務員。ちなみに、小中高と学習塾には通ったことがない。塾講師として務めたことはある。英語は得意だが、専門分野ではないので、英検1級をとったのは、数年前海外の研究機関へ留学するためにIELTSを勉強したときに、ついでに受けたものだ。

今年の四月、海外の研究機関へ挑戦したが、見事に不合格、そして、それを合図に、学習塾設立へと舵を切った。

学習塾を開くにあたっての狙いは、英検の浸透していないような地方に設立、そして、できるだけ低料金で英検を取得(できれば準1級以外は、受験しなくていい)を可能にすることだ。そして、フランチャイズの学習塾、他の高額な料金をとる英検専門の塾に、打ち勝つ個人塾を目指している。

もともと、そんなに儲けるつもりもない。ボランティアでも良いかと思ったが、それでは宣伝広告の実施、しっかりと教える場所の確保、そして何よりも競合他社に認識させ、価格競争に持ち込むことができない。

これは、わたしなりの、教育ビジネスに対する挑戦であり、受験制度対しての反抗なのだ。とても、小さいけれど、わたしと出会った生徒は必ず、幸せにしよう。

2018年5月、わたしは学習塾設立に向け、テナントを探すことになった。

つづく